4.小説文の読み方
ここまで論説文を例として説明してきましたが、現代文の長文読解にはもう一つ小説文というジャンルがあります。
論説文のようにしっかり論理展開していくものではないので、入試問題としては少々やっかいです。
しかし、小説文にももちろん決められた答えがあり、そこに至る道筋も問題文中に示されています。
ただし、論説文ほど明快ではないですし、解答・解説を読んでも納得できない、という時もあるかもしれません。
そこでまずおすすめしたいのが、大変ベタではありますが、小説を読みなれること。
本が苦手な人は、教科書でも構いません。
目的は、小説独特の感情描写・情景描写に慣れることです。
①感情描写 小説文を理解するには、想像力が不可欠です。
といっても、よく設問にあるような「このとき主人公はどう思ったか」について自由に自分だったら…と思いをめぐらせる、という意味ではありません。
ここでいう想像力とは、問題文の中にある「根拠」に基づいて、登場人物の気持ちを推定していく力のことです。
この「根拠」となるのが、感情描写・情景描写と呼ばれる部分なのです。
例えば、「笑う」表現を例に見てみましょう。
単に「笑う」といっても、満面の笑み、声をあげた大笑い、ほほえみ、苦笑、失笑、嘲笑などたくさんの種類があります。
笑みを表す言葉としても、にっこり、にたり、にやり、にんまり、などなど枚挙にいとまがありません。
口角が上がった、のような描写もあります。
まず、これらの言葉がどのような場面で使われるのか、ある程度知っている必要があります。
その点では、語彙力といってもいいかもしれません。
もちろん、小説ではその言葉単独で登場人物の気持ちを表しているわけではなく、前後の文脈で判断することは可能です。
しかし、試験ではそれだけでは判断の根拠として弱いことがままあります。
「にんまり」と「にたり」の違いがキーポイントとなることもあるのです。
特に選択肢を選ぶ場合、似たような表現の中から最適なものを選ぶには、根拠となる描写を確実に拾い、言葉としての意味を正確に理解しておくことが重要になってきます。
この語彙力の差は、読書量にほぼ比例します。
高校2年生までのみなさんは、忙しい中とは思いますが、ぜひ今のうちにたくさんの小説、たくさんの表現に触れてください。
受験生のみなさんも、あきらめることはありません。
問題文として接した小説や教科書の小説だけでもいいので、読んでパッと場面がイメージできなかった表現があれば辞書で調べるようにしてください。
さらに、一つトレーニングをしてみましょう。
小説で読んだ表現を頭の片隅に置いておいて、日常生活で思い出してください。
友達と話している時「あ、アイツ今『にんまり』笑ったな」という具合に、言葉と行動を結び付けてみましょう。
これで、「にんまり」という言葉はあなたのものになります。次からは、言葉を見た瞬間頭の中に映像が浮かんでくれるでしょう。
そして、この「映像が浮かぶ」という状態こそが、小説文を読むにあたる目指す状態です。
とはいえ試験会場で文章をじっくり味わって思いを巡らせる時間はありません。
問題文を読み進めながら同時に映像に変換していける状態が理想です。
この作業は、次に説明する「情景描写」を理解するのにも大変役立ちます。
②情景描写
物語の特定のシーンの光景や有様を描写することを情景描写と言います。
情景描写は一見ストーリーには関係ないように見えますが、登場人物の心情の変化やその後の展開を暗示する重要な部分です。
試験では、情景描写部分で描きたかったことは何かをダイレクトに設問として聞いてくることもあります。
情景描写を理解するには、感情描写以上に語彙力と映像化する力が必要です。
大事なのは、言葉に対してイメージを持つことです。
「明/暗」「生/死」「大胆/繊細」「動/静」など、対立概念でとらえると分りやすいです。
よく使われる例が、色の描写です。
「透き通るような青い海」「真っ赤に燃える夕日」「黄金色の大地」「灰色のけむり」「黄ばんだ空」「鉛色の目」など、無限にあります。
これらの描写から、どんなイメージを持つでしょうか?前半3つを映像にしてみましょう。
爽やかさや希望、自然の恵みなどプラスのイメージを持つことができるでしょう。
一方、後半3つはどうでしょうか。
淀んだ空気、不安、暗さなどマイナスのイメージが浮かぶのではないでしょうか。
色を使った情景描写は比較的分りやすいですが、試験ではもう少し難しく細かいところまで聞いてきます。
さらに選択肢を選ぶタイプの設問では、非常に紛らわしいものがほとんどです。
全体を読んだ印象だけで選ぶのは危険です。
情景描写部分を詳細に冷静に拾い、語句の意味を捉え、イメージし、矛盾のないものを選ぶようにしましょう。
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